Top of Rack(ToR)とEnd of Row(EoR)のラック配線の違い

データセンター内でのラック間の配線を考える際に,代表的な2つの考え方が,Top of Rack(ToR)End of Row(EoR)です。

Top of RackとEnd of Rowのラック配線の比較

Top of RackとEnd of Rowのラック配線の比較

Top of Rack(ToR)とは?

Top of Rackデザインは,各ラックの中に,1つか2つのスイッチを配置し,そこからラック内のサーバーに配線する方法です。

通常,ラックの最上部にスイッチが設置されることが多いため,Top of Rackという名称になっています。もちろんこれは概念を表すものですので,スイッチがラック内のどこに設置されていても,Top of Rackと呼びます。

それぞれのラックからは,ファイバーケーブルでルーターまで集約されます。

End of Row(EoR)とは?

End of Rowデザインでは,各ラック内のサーバーからスイッチまで,一つ一つに配線されます。サーバーラックとネットワークラックを明確に分離している場合には,そのような構成になるでしょう。

Rowというのは「行」ですが,ラックの並びを1行に見立てた場合,両端のラックがネットワークラックになるような構成をイメージできます。

つまり,サーバーラックから,End of Row(ラック群の端っこ)である,ネットワークラックまでケーブルが伸びるので,そのような名称になっています。

Top of Rackのメリットとデメリット

では,Top of Rackにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

■Top of Rackのメリット

・銅ケーブルがラック内だけにとどまります。それらを大量に引き回す必要がありません。
・ケーブルコストが低くなります。ケーブルマネジメントもシンプルです。
・ラックごとに独立したアーキテクチャになるので,ラックごとのアップグレードや変更が容易です。
・スイッチまで短い銅ケーブルで配線できるので,低電力,低コストです。10Gの銅ケーブルを用いることも容易です。
・ユニファイドファブリックという最近のトポロジーを構築できます。

■Top of Rackのデメリット

・管理するスイッチの数が多くなります。
・各ラックからファイバーケーブルを集約するためのファイバー用ポートがたくさん必要になります。
・サーバー間でのL2トラフィックが増大します。
・L2でラックが接続されるため,管理すべきSTPインスタンスが増えます。
・スイッチごとに独立したコントロールプレーンが必要なため,スイッチのリプレースに高い技術を要します。

End of Rowのメリットとデメリット

では,End of Rowの構成の場合にはどうでしょうか。

■End of Rowのメリット

・管理するスイッチの数が少なくて済みます。
・集約するためのポート数が少なくて済みます。
・ラックはL1で接続されるので,管理すべきSTPインスタンスが少なくて済みます。
・長寿命で,高可用性があり,サーバーアクセスに対して,モジュール式のプラットフォームを実現できます。

■End of Rowのデメリット

・銅ケーブルを使った,高価で,取り扱いにくいインフラを構築しなければなりません。
・パッチングやケーブルマネジメントがより複雑です。
・長いケーブルを使うので,低電力でハイスピードなサーバーI/Oに耐えられないかもしれません。
・将来性があるというよりも,将来問題が起きる可能性が高いです。
・ラックごとの管理性が良くありません。構成を変えるとすれば,ラック群ごと変えなければなりません。

まとめ

新しいという意味では,Top of Rackを採用したくもありますが,ラック内がそこまで高密度ではない場合には,スイッチの台数だけ増えてしまいかねないため,そのあたりも判断が必要です。

上記の要素やトータルでかかる導入コストを考えて,設計する必要があります。

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